2013年7月1日月曜日

種類株式は普通株式の何倍の価値があるのか?

最近の未上場企業の投資実務においては種類株式の活用が増えてきました。
種類株式とは、普通株式とは権利内容の異なる株式のことで、代表的なものとしては、

1 M&Aや会社清算時の資金回収を優先させる (EXIT時にリターンが十分に出ていない場合、種類株主に優先的に分配を行うことにより、投資家側のリスクヘッジを図る)
2 役員の選任権や特定議案の拒否権を持たせる (経営参画によって、投資家側のリスクヘッジを図る)
3 配当により資金回収を優先させる (早期の資金回収によって、投資家側のリスクヘッジを図る)
といったように、外部株主として会社の将来性やガバナンス面を完全にコントロールできない不安定性を「リスクヘッジ」するというのが、主な使われ方になっています。

実務上、少しややこしいのは、種類株式が行う権利調整では、基本的には定款で記載する必要があるため、定款に記載することが実務上馴染まない内容(会社法上、認められていない内容)については、別途、投資家(種類株主)と会社との間で投資契約を締結したり、株主間契約を締結するというのが通例となっています。つまり、会社と投資家の間で、資金調達にかかる利害調整のための大枠での合意があって、それを構成するツールが、種類株式であり、投資契約や株主間契約であるという位置づけです。

日本における、ここ数年の実務では、どちらかというとベンチャーキャピタルなどの投資家側の主導で設定しているケースが多いため、普通株式の最終ファイナンス価格と「同額で」もしくは「多少の上乗せのみで」発行されるケースが散見されました。つまり、「種類株式には相応の(高い)価値がある」ということは意識されずに、通常の普通株式のファイナンスの延長線上で扱われてきた経緯があります。
例えば、直近で普通株式1株あたり10万円で増資をしている場合において、さまざまな経済的条件や経営支配条件をつけた種類株式が1株あたり10万円程度で発行されるイメージです。この場合、種類株式1株で、少なくとも普通株式1株以上には転換できることになっており、かつ、M&A時や解散時などは、普通株式に優先して投資回収できる旨の規定があることから、経済的にみると、普通株以上の価値(場合によっては何倍にも!)があると考えられるにも関わらず、それに対するプレミアムはほとんど評価されていないのです。

これは、リーマンション後においては、特にベンチャー事業の資金調達環境が芳しくないため、企業側の交渉力が無かったことが要因かもしれませんが、本質的には、出資を受ける企業側の知識が乏しかったことが真因であると考えられます。私も「ずいぶんと投資家(VC)に有利な発行条件だなあ」というケースを多く見てきましたが、どうも調べてみると、米国では同様の種類株式を発行するケースにおいては、普通株式の株価に相当なプレムアムをつけて発行するのが通例のようです。

2年ほど前の国内大手監査法人が行った米国のIPO事例の調査結果によると、創業間もない「シード期」においては、普通株式と種類株式の価格差は[6-7]倍程度もあり、IPO直前の「レイター期」においては、価格差はは[2-3]倍程度まで縮んでいるようです。つまり、シード期においては、事業自体が不安定なため、種類株式が設定している「権利調整条項」が発動する可能性が高いため、その分が普通株式の価値に上乗せとしてカウントされるが、事業が安定してくる「レイター期」においては、権利調整条項の発動可能性も低くなるため、よりフラットな評価になるということです。
(ただ、米国では、意図的に普通株式と種類株式の価格差を大きく設定することによって、経営陣等に付与する普通株式のストックオプションの価格の意図的な引き下げを図った可能性も指摘されており、必ずしも本質的な価値を表していない可能性もあります)

種類株式の価値算定方法は、AICPA(米国会計士協会)からも実務対応報告(会計基準の一種)が出されています。少々難解な内容ですが、別途解説をしたいと思います。