2012年12月21日金曜日

民事再生 素朴な疑問

平成21年に成立し、過剰債務に悩む多くの不振企業を救ってきた「中小企業金融円滑化」が、平成25年3月末をもって、いよいよ終了します。今まで先送りしていた過剰債務の問題が、一気に出てくることも考えられます。そこで必要となるのが、次なる財務リストラ。
私の今までの経験に、倒産法弁護士のコメントをいただきつつ、民事再生にかかる素朴な疑問をまとめてみました。

1.民事再生以外の財務リストラには、そもそもどんな方法があるのか?
まず考えるべきは、法的な再生だと、どうしても公知の事実となり取引先への信用が毀損し事業上の痛みを伴うといったことがありますので、まずは、取引先や仕入先への悪影響を軽減できるような私的な財務リストラを考える必要があります。
私的な財務リストラとは、リスケジュールやDDSによる条件変更や、債務免除、DESにより減免する方法が基本です。また、それを実務上サポートする仕組みとして、私的整理ガイドライン、事業再生ADR、中小企業再生支援協議会スキーム、企業再生支援機構スキームなどがあります。
ここでは、個別には記載しませんが、どの方法にも一長一短はあるようです。ただし、本質的には、法的な強制力はなく、「関係者の善意に基づいた合意」が大前提となるため、決着までには相応にハードルは高い印象があります。
特に私的整理の場合、経営責任が曖昧になるケースがあるため、その点はしっかりとケジメをつけて、その代わりに事業を守ってほしいという謙虚な姿勢で交渉に臨むことが必要かと思います。
ただ、私的整理による方法だと、どうしても交渉が難航する場合もしくは本質的な財務リストラとはなりえないような場合には、時間や確実性の点から法的な整理を検討することになります。

2.民事再生手続きとは、メリットとデメリットは?
上記のような私的整理だと、再生は困難な場合には法的整理を検討することになりますが、その代表格である民事再生手続きとは、言ってみれば債権者との債務削減交渉の最終手段。
「破産して事業をやめてしまうより、事業を継続して少しでも弁済(再生計画の承認)したほうがトクですよね」、といったいわば捨て身で説得する究極の交渉方法になります。
(メリット)
成功すれば(再生計画が認められれば)債務の削減効果は確実に得られることができます。
また、信用不安の解消によって、新たなビジネスが出来たり、資金調達ができる可能性もゼロではありません。
ただし、信用不安が解消するかどうかは本質的には、事業の魅力度や経営者の資質や努力など、個別の要因で左右されるわけなので、民事再生を申し立てたから自動的に信用不安が解消するという訳では無いと思います。
(デメリット)
当然のことながら、法的整理によって、金融機関、取引先、仕入先の信用を落とすことは(ほぼ)確実です。あと、経営者個人としても保証債務の履行を求められ、個人の破産を申請するケースは少なくはありません。その点を考慮してでも、法的整理に踏み切るかというのは、重要な判断ポイントになるかと思います。


3.民事再生の準備、金融機関/仕入先とのコミュニケーションは?
民事再生の申し立てで評判を落とすにも、そのマイナス効果を最小限にとどめる方法を考えていく必要があります。一般的には、いきなりの再生申し立てをするのでなく、周到な準備(根回し)を行ったほうがよいと思います。
具体的には、誠実に事業建て直しの計画を策定することが重要です。つまり、事業にかかる外部環境、内部環境を十分に見直した上で、経営課題の洗いだしを行います。
そしてそれをいかに実現すべきかについて十分に検討したうえで、基本的には自助努力での改善を目指す必要があります。
ただし、自力での解決策が十分ではない場合には、経営責任をどう考えるかについて明確にした上で、長期的な金融支援(リスケジュール、債権放棄等)をお願いしますといったアプローチです。このプロセスを十分に踏まないと例え民事再生を申し立てたとしても、関係者の協力は得られず、債権者集会で再生計画が否決されてしまうケースもありえます。
なお、金融機関はいってみればプロの立場で融資判断をしているわけですが、仕入先などは今後の事業継続にとっても重要な関係者になるわけなので、悪影響を最小限に留めるような周到な準備が必要となります。

4.再生の計画、スキームはどのようになるのか?
再生計画というと聞こえはよいのですが、平たくいえば債務の弁済計画ということであり、概念的に分けると、①自主再生型、②スポンサー再生型、③折衷型に分けられます。①は今後得られるであろう利益を原資に債権者に弁済しますという計画であり、②は事業をスポンサーに譲渡してその代価で一括弁済しますという計画で、③は①と②の折衷方法になります。例えば、スポンサーから出資を受けて一部を弁済原資にしつつ、将来の収益からも弁済しますといった方法が③になるわけです。ではどの方法がよいかというと、民事再生法の施行初期においては①の自主再生型が多かった印象がありますが、単独だと事業の建て直しが十分に出来ずに計画の途中で破産に移行してしまうケースが多く、次第に②か③のスポンサー型が大半を占めるようになってきたように思われます。
やはり、いったん失った信用を単独で取り戻すのは並大抵のことではなく、スポンサーからの信用補完が何らかの形で必要なのかもしれません。なお再生計画ではどの程度債務を弁済する計画、逆にいえば債務をカットする計画を立てればよいかについてですが、一概にはいえませんが、法的には最低限、破産の場合の配当率を上回る必要があるとされています。
個人的な感覚でいえば、破産配当率が数%以下だとしても、再生計画による配当率は、少なくとも10%、できれば20%以上は目指したいところですが、事業の収益性や将来性などとの総合判断になるところかと思います。
スキームはどうなるかといえば、上記②、③のスポンサーが入る場合には、主には許認可や税コストなどを考慮しながら、事業譲渡や会社分割、増減資のどの方法を採用するか検討するイメージかと思います。

5.代表者の個人破産は必要なのか?
通常、中小企業の借入金には、代表者の連帯保証が付されているため、保証債務の履行請求が個人になされることになります。ただし、個人としても到底支払うことが出来ないわけなので、破産を検討することになります。
法律的には、代表者個人としての破産は必須ではないようです。ただし、金融機関からすると、経営責任を明確にするために、再生計画の承認と引き換えに代表者の個人破産を要求してくることも多いようです。従って、話し合いの余地はあるものの、個人破産については、ある程度は覚悟しておいたほうがよいでしょう。
個人破産の場合に、不利益となるのは、概ね①官報に破産者として名前が載る(といっても、誰が見るのでしょうか)、②資産を引き渡す(99万円までの現金、生活必需品などを除く)、③破産手続き中の自分宛の郵送物は転送される、④破産手続き中の居住制限がある、などでしょうか。
たしかに破産といえばネガティブなイメージは根強いものの、かえってリセットされてよかったという声を聞くこともあります。
日本も、過去の失敗を寛容に受け入れる社会に成熟しつつあるようにも思いますし、昔ほどネガティブに考える必要はないのではないでしょうか。

6.手続き費用、アドバイザーの選定は?
裁判所に支払う民事再生の申し立ての費用(予納金)は、東京地裁の場合、例えば負債総額が1億円~5億円未満の小型の案件であれば400万円、10億円~50億円未満の中型の案件であれば600万円などと明示されております。(ちなみに予納金といっても、戻ってくる性質ではなくて、裁判所が選任する監督委員(弁護士、会計士)の報酬に充てられることになります。)
これに、申し立て側の法律事務所、会計事務所費用などが、一般的には、予納金の1.5倍~2倍程度はかかります。
申し立て時点でそのキャッシュが無いと手続きできないかといえば必ずしもそうではなくて、実質的に事業のスポンサーが負担するようなスキームも構築は可能です。従って、完全な自主再生でもない限り、キャッシュポジションに拘る必要はないかもしれませんが、ただ、申し立て費用だけでなく、再生手続き中の資金繰りの計画については慎重に検討が必要です。
申し立て側の弁護士の選定は何よりも重要です。やはり、倒産法の専門家で、かつ業界のことにも通じているようなプロフェッショナルな方を探すのがよいでしょう。

7.事業の再生はできるのか?
事業が再生できるかは、当然に未知数ですが、①本業自体が必ずしも毀損していないこと、②経営者が誠実であること、③よいスポンサーが付くこと、の3つが揃っていれば、事業が再生できる可能性は非常に高いと思います。逆に1つでも欠けると、かなり難易度が高まる印象です。
民事再生手続きは、あくまでも財務リストラの一手段。このプロセスを通じて、いかに事業の付加価値を再構築し、関係者の信用を取り戻すか、これに尽きるように思います。