2012年11月8日木曜日

海外移住と日本の税金

「海外に移住すれば、日本の税金なんて関係ないだろう」と安易に考えがちですが、特に資産家の方の海外移住においては、注意が必要です。

日本の住所がない人でも日本の課税を受けるケースは、例えば、次のような例が考えられます。
1.海外に移住してから、日本で保有している不動産の賃料収入について日本での課税を受けた
2.海外に移住してから、日本で経営していた会社の株式を売却したが、日本でのキャピタルゲイン課税を受けた
3.海外に移住してから、「日本国内の財産」の贈与(相続)を受けたが、日本での課税を受けた
4.海外に移住してから、「海外の財産」の贈与(相続)を受けたが、日本での課税を受けた

1は、非居住者の所得税の典型的なケースです。非居住者といえども、国内源泉所得(つまり、日本国内で獲得した所得のこと)については、引き続き日本の課税を受けることになります。

2は、通常、非居住者の株式譲渡については、日本国内の税金は非課税です。従って、シンガポールなどキャピタルゲイン非課税の国に移住すれば、無税なのか?といった疑問が生じます。ただし、株式シェアの25%以上保有している大株主が、5%以上の株式を売却するケースなどは、「事業譲渡類似株式の譲渡」といって、国内に所得の源泉があって、課税を受けるという規定があります。これは意外と知られていない規定なので、注意が必要です。
(ただし、日本と米国間のように、国によっては租税条約において、上記25%・5%ルールの適用は否定されるケースも存在します。)

3については、もともと相続税が想定していたような基本ケースです。日本国内財産の相続においては、誰が取得しようとも、相続税が発生します。

4の「海外移住+海外資産の贈与(相続)」は、従前は、課税されないケースでした。資産家の間で、武富士の贈与税事件でも見られた「海外移住+海外資産贈与」という節税スキームが密かなブームとなったため、平成12年の税制改正で、封じ込めがなされました。
現在は、海外資産の贈与、相続については、①資産をもらう側が、海外移住だけでなく日本国籍も外れること、もしくは、②資産を渡す側、もらう側の両方が5年以上海外に住み続けること、のいずれかに限定して、課税対象から外れることになりました。これにより、節税の余地が相当に狭まった感はあります。
ただし、昨年2月の武富士事件の判決で、従前より不明確であった住所の概念が明確化されることによって、逆にタックスプランニングがしやすくなった面もあります。とはいえ、よくよく判決文を読むと、「現時点では、2箇所住所という解釈は馴染まないが、今後は可能性はある」といった趣旨の裁判官のコメントもあります。
最近の情報通信インフラの発達から考えると、いずれ、5年超日本を離れていたとしても、日本と海外の2か所に住所はあったとみなされて、日本での課税が生じる可能性はあるかと思います。

【2013年1月30日追記:平成25年税制改正大綱によると、上記4①のように、海外移住+日本国籍を外れた場合の海外資産の贈与(相続)についても、課税対象と扱われることになりました。最高税率の引き上げ(50%⇒55%)に合わせて、国外移住が増えることに対する防御策だと思われます。 】