2012年10月22日月曜日

ストックオプションの時価発行

ベンチャー企業の資本政策を検討している中で、よく出てくるのが上記のテーマです。

通常、ストックオプションとは、インセンティブ目的で発行されるケースが多いため、無償(つまり時価よりも低額)で発行されるのが通例ですが、無償発行の場合、将来的な権利行使時(オプションを行使して株を引き受ける時)に課税をされるという課題が生じてしまいます。

ただ、オーナー経営者以外で、かつ少量のオプションの発行の場合には、「税制適格」の要件に当てはまるため、権利行使時課税の問題は避けることが可能です。

しかし、オーナー経営者サイドの安定シェア確保の目的の場合などにおいては、税制適格の枠に収めるのは難しく、また、権利行使時課税の問題をクリアする観点からも、ストックオプションの時価発行が検討されるという流れになります。

ここで実務的に難しいのが、第一に、このオプションの価値はいくらなのか?という問題です。
ブラックショールズモデルなど、金融工学に基づいた価値算定方法では、計算要素として「株価変動率」も必要となりますが、ベンチャーなどの非上場企業の場合は株価変動率自体がないため、現状だと、「類似上場企業の株価変動率」を使うといったケースが一般的かと思います。

これで計算をすると、
・現状の株価  100円
・権利行使株価 100円
・権利行使期間 5年
・株価変動率  30%
と仮定をすると、オプション価格は25円程度となります。

つまり、将来的に現状株価で増資を引き受ける権利が、今の株価の25%で購入する必要があるということなのです。仮に、5年後に株を引き受けないとこの権利は失効し、また、引き受けるのであれば、追加的に100円必要となり、1株を引き受けるのに合計で125円の対価の払込が必要となるわけです。

このように非上場企業においてのブラックショールズモデルの適用は、私の関与している案件でも少なくとも数年前(ストックオプション会計基準が明確になった平成17年以降)から10数件は行っていますが、同業の会計士などと情報交換はしていますが、まだまだ「実務慣習」といえるほどのものはなく、将来的には税務トラブルなどになる可能性もゼロとは言えません。

そして、第二に難しいのが、このように計算された時価が現状で支払えるのか?という問題があります。特に経営者向けのオプションは大量発行になるケースが多く、その支払い対価を賄えるのかという問題です。現状で支払えなければ、権利行使株価を上げるとか、権利行使期間を短くする、権利行使の制限を付けるなどの対応を行い、理論的な時価を下げる工夫を行う必要があります。
(株価変動率をどのように定義するかの議論はもちろんありますが、恣意的な設定だと、税務リスクが生じてしまうことが懸念されます。)

このように、いまだに明確な実務慣行が無い中でどのように合理的な設計を行うべきか。現状だと、さまざまな角度から慎重な検討を行うといった原則論で勝負する他はなさそうです。